インタビューが始まって開口一番。
はるる「僕らを呼んだのって、同い年っていうの狙ってました?」
……ごめん、全然知らなかった。なんたるリサーチ不足。
毎節ごとのDTL選手による対談インタビュー。今回はDMGPが終わったこともあり、直近のDMGPに縁が深い3人を呼んでみた。
2024-2ndで両日予選抜けとハイアベレージを出したFTG所属のはるる。
2023-2ndの4位、2024-1stのチームベスト8が記憶に新しいSAGA所属のにわか。
そして、2024-1stチーム戦優勝、魔王軍所属のりっきー。
先述の通り全く狙っていなかったのだが、全員が2002年生まれでDTL最年少。各チームの中でも末っ子ポジションに収まっているらしい。
そしてこの3人―――特ににわかに関してはわかっていたことだったが―――硬派なインタビューに適当な人材とは程遠かった。
だからこそ、今回のインタビューは彼らの良さを引き出せるように、ゆるゆる~……と書いていきたいと思う。
ショップに行ったらGP覇者がいた
まずはるるについて元々DMGPとはなんだったのか……について聞いてみたが、驚きの答えが帰ってきた。
はるる「1st…初代王者の垣根さん。彼が地元のショップにいたんですよ」
マジか。
はるる「なんかカードショップに行ったらGP覇者がおるみたいな噂で、見に行ったらほんまや!みたいな」
はるる「当時僕は始めたてで中学生のガキだったんで、プレイヤーとしての世代が合わなかったから直接の関わりはなかったんですけどね。それで言うとコバさん(現ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社員の小林氏。バイク仙人や公式の実況解説でおなじみ)とかもですね」
さて、はじめはこんな風にどこにでもいるひとりの少年だったはるる。
彼が競技デュエマの道に進むことになったのは2年後。とあるCSでの優勝からだった。
ブルーポニーに人生を狂わされた
はるる「ランキングを走り始めたのは2018年度からですね。高1のときです」
にわか「すげーやってんだな……」
はるる「ブルーホースCSが小中学生限定のCSを開いていた時期があったんですよ。ブルーポニーCSっていう」
ブルーホースCS。DMPランキング黎明期から自店舗で積極的にCSを開いている神奈川のCSだ。
今はもう開催されていないが、小中学生限定での大会と称して「ブルーポニーCS」を開いていた時期がある。
はるるの参加履歴を見てみると親子で参加すると無料という形式での大会なんかでの入賞歴もあり、なんだか当時の微笑ましい光景が垣間見える。
はるる「ちょうど中学校を卒業する直前のタイミングだったんですけど、ブルーポニーCSで優勝しちゃって……しかも2倍で2000ポイント入っちゃったんですよ」
だが、彼にとってはそれこそが殺伐とした戦場への入り口だった。
はるる「それまでもそれなりにポイント盛ってて、この2000ポイントでものすごいスタートダッシュになっちゃって、なんか全国出場ラインが全然現実的というやべえラインにいるな、となって……」
はるる「で、人生狂っちゃいました」
そう、当時のDMPランキングに身を投じるということは平日に開催されているCSにも積極的に参加することを求められる。
はるるの輝かしい高校生活、その1年目の運命は、少なくともこの瞬間に決定づけられたのだ。
はるる「間違いなくあの瞬間に歯車が壊れましたね」
にわか「お告げだ……」
とはいえ、その後順風満帆というわけではなかった。
2018年度はボーダー手前まで迫るが全国に届かず、2019年度も同様。
コロナ禍以前は全国大会出場を逃し続けていたのだ。
はるる「実は最強位をカウントした上で今まで全国大会に行けたのは2022年度、2023年度の2回だけなんですよ。コロナ禍前はそんなに勝てたわけじゃないんですね」
はるる「2018、2019年度……2年間心を抉られてますからね」
彼はこの状況を「挫折」と呼んだ。
相当な悔しさと共にその後の高校生活、いや、学生生活の全てをデュエル・マスターズに捧げることを決めたのだ。
はるる「今ランキングを走ろうとしている人は1度挫折を経験してほしいですね、本当に」
悔しさがこれほどまでの原動力となることをよく知っているからこそ、この言葉は非常に重い。
そして、2024年度は上期ランキングで出場権利を獲得済み。全国大会での活躍にも期待したい。
当日にデッキを5枚増やした
さて、DMPランキング施行後のCS優勝回数は72回、全プレイヤーの中でもダントツの1位であるはるる。
しかし大型大会のここ1番に弱いという弱点があった。DMGPの予選突破は2024-2ndまで1回もない。
そんな状況を鑑みて、今回はGPの取り組みを変えたという。
はるる「一応CSでの優勝回数は僕が1番多いから理論上CSで優勝するのが1番得意な人類ではあると思うんですよ、でも大型大会はめちゃくちゃ苦手で」
はるる「もう逆転の発想で、今までのやり方で大型1回も上がれないなら、逆に今までで1番ひどい練度で行ったらどうなるのかっていう……」
……いや、振り返ってみたとき冷静に常人の解答ではないな。
はるる「アドバンスが特にひどくて、朝起きたときに《13番目の計画》を1枚入れてデッキを5枚増やすことを決めたんですよ」
……当然だが、デッキに《13番目の計画》を入れるにはそれなりの理由と覚悟が必要である。
はるるが今回使った【青白ヘブンズ・ゲート】では≪ギャラクシー・チャージャー≫を引く確率を下げすぎないため、トリガーの濃度を下げすぎないためにデッキを40枚で組んだほうが安定性が増すというのは自明の理だ。なんなら超次元の1枠すら吟味が必要。
そんな中、安定した大会戦績を残すことから、理論に基づいたデッキ選択、デッキ構築をするであろうはるるが、朝起きたときのノリでデッキを5枚増やしてDMGPに臨んだのである。
はるる「もう知り合いに会うたびに《13番目の計画》見せびらかしてましたよ、今日45枚で出るんだ~って。気が気じゃないですよ、普通に」
はるる「まあ全国が決まっていて気負いをしていないからこそできることではあるんですけどね」
にわか「……おれははるるが恐ろしいよ」
はるる「で、当日は45枚にしたのにトリガーは踏むしチャージャーは引くし……都合いいな~って」
ノリが理屈を上回った瞬間である。結果論でしか語れないカードゲームの恐ろしいところだ。
にわか「もしかしたら今までの敗因、緊張しすぎてたのかもしれないよね」
はるる「そうだね。ある意味緊張感からは解き放たれてたし……」
はるる「DTLでも極力緊張しないようにはしてますね。前期は5-3で勝ち越したけど、ドラちゃん(◆ドラ焼き)とかるるるとか、リーグ内でも勝負強い側の人間にばっか当たるから気が気じゃなかったけど……」
今回の勝利で一皮(?)剥けたはるる。DTLや全国大会での活躍も楽しみなところだ。
はるる「まああとね、音楽聴くのがいいっす」
はるる「やっぱりVTuberの音楽を聴けば両日上がれるんで。オススメです」
なるほどね。
シンデレラボーイ、にわか
さて、同席しているにわかの話に移っていく。
2023年度上期から絶好調で一気にスターダムにのし上がったこの男、なんと直近のアドバンスでも優勝を重ねている。
はるる「そうだよね、最近めっちゃ勝ってるよね」
にわか「そう、今週だけで3000ポイント盛った」
はるる「すごっ」
にわか「でも今週家族旅行あるからCS出れないんだよね……」
ちょっとほっこりする理由でよかった。
直近だけでなくこの2年ほど彼の絶好調は止まる気配がない。2023-2ndの4位、2024-1stのチームベスト8に続いて、2024-2ndはオリジナルで予選突破。3大会連続で好成績を残しているがため、もはや今回のベスト128が霞んで見えるほど。
そんな彼の転機は2023年度上期。DMPランキングでの全国大会を決めたことが、ここまでの躍進に繋がっている。
にわか「やっぱ去年の上期で勝てたのが大きかったですね。それまでのGPってお祭りみたいなテンションで参加してたのが、ちゃんと勝つぞ!って自信を持った状態で臨めたので……」
にわか「やっぱパーテーションの内側っていうんですかね、そこに入り込めた気がします」
そんな彼はあーくんやのすけと共にWiNG CSのスポンサードを受けていた時期もあり、DTL参戦にあたってもりっきー同様新進気鋭の選手として参戦しているのだが……。
落ち着いて考えてみてほしい。彼が勝ち始めたのはたった1年前だ。
もちろんそれまで有力選手として名を連ねてはいたが、コロナ禍以降最も台頭してきた選手のひとりであることは間違いない。
それにしても1年間で取り巻く環境が一変したというか……。
にわか「なんか知らないうちにいい方向のものに巻き込まれていってる気がしますよね……」
にわか「神様が勝っていいよ~って言ってくれたんでしょうね。人生が終わりかけてたおれのことを救ってくれたのかも……」
ちょくちょく天運にまつわる言い回しが多い。実力もさることながら、こういう考え方こそが福を招くのだ、というべきだろうか……。
にわかのアレ
私は関西の人間なので、実を言うとにわかのことは言伝でしか聞くことがない。
とはいえ読者諸兄と同様、DMGP2023-2ndでのアレが強烈に焼き付いていることは間違いないだろう。
はるる「まあ……にわかに関するエピソード、アレより上のエピソードはないんじゃない?」
にわか「そうだね、アレでいい方向にも悪い方向にも全てが変わってしまった」
はるる「撮られてるのがわからなかったし、そもそも無意識だったんだっけ」
にわか「うん、全然知らんかった。ただたつどら(対戦相手)と話してただけだったんだよね」
……ただ話してただけであの顔はしないと思うが。
はるる「あれでもうGPの顔になっちゃったからね……」
実際私の第一印象もそれである。なんというか、世間に認知されるきっかけがこれとは恐ろしい……。
これは余談だが、この場に揃った人間それぞれにデジタルタトゥーや黒歴史があり、この話題をきっかけに全員の傷が少しずつ抉られていったことも記しておく。詳しくは記載しません。
あれ?
さて、みなさんはここまでの文章で違和感にお気付きであろうか。
今日は21:00からDiscord通話にて、はるる、にわか、りっきーを招いてのインタビューとなっている。
はるるともにわかとも、それぞれのDMGPや躍進についての思い出について語り切ったところで、時刻は21:40になろうとしている。
未だ、りっきーが、いないのである。
さらに10分経った頃。ポコン、とDiscordの通知音が鳴り響く。
ついにりっきーが来た……かと思いきや、魔王軍のチームメイトである◆ドラ焼きだった。
◆ドラ焼き「りっきー来てないよね?このインタビュー終わったあと調整する約束だったんだけど……」
……ワーオ。
遅れて◆ドラ焼きからもう一報。
◆ドラ焼き「電話したけど繋がらなかったよ」
はるる「寝てますね」
にわか「寝てるな」
私も最近知ったのだが、3人と同じく合点がいった。
……実を言うとりっきーとは、そういう男なのだ。
同い年クレイジー部門1位
りっきー。にわか同様、コロナ禍以降に台頭してきた関西のプレイヤーだ。
リモートCSでの実績を積み重ねたあとにリアルCSでも結果を残す、ある意味コロナ禍以降らしいステップアップを踏んでおり、2023年度後期にはDMPランキングでの全国出場ラインを争っていた。
大型大会や全国大会での実績がない中で抜擢されたことから意外な人選と思われたが、若さとモチベーションの高さを武器にグングン成長中。選出直後、DMGP2024-1stでのチーム戦優勝が印象に残っている方も多いことだろう。
アクアCSでの大会主催も行うなどマルチに活動してきたことから、真面目な印象を持つ方が多いと思う。実際私もそうだった。
……だが。
はるる「世間的にはこの中だとにわかが1番クレイジーって感じに思われてると思うけど、さすがにもうりっきーが同い年クレイジー部門1位だね」
にわか「いやー……おれより上がいるとは思わなかった……」
その本性は天然を通り越してクレイジー。そう評価せざるを得ないかもしれない。
それを象徴するエピソードがこれである。DTLに出場したあと秋葉原で野宿の後、始発で帰宅……ではなく金沢に向かってCS運営をしたのが最大のクレイジーポイント。
ちなみにこのようなエピソードは枚挙に暇がない。DTLではだいたい控室で寝ているらしいし、寝るためのブランケットを常に持ち歩いている。
なんというか……そういう方向にだけ準備がいいの、地頭の良さの使い方を間違えてませんか?
11/19追記
証言によると、CS運営ではなく、主催するCSに出場して全勝優勝を果たした模様。
失礼いたしました。冗談も程々にしてほしい。
保護者2人目
ということで、◆ドラ焼きも交えてインタビューを行うことに。
はるる「りっきー、本当に自由人だな……」
にわか「魔王軍、保護者2人いるんだ……」
もちろん1人目の保護者はdottoのことだし、保護される側の人間はりっきーのことである。
ということでりっきーに関して◆ドラ焼きに聞いてみることにした。
◆ドラ焼き「りっきーはな……頑張っとるぞ!!」
力強い解答が帰ってきた。
◆ドラ焼き「こないだもデッキ3個くらい持ってきてくれたんだよね。で、全部僕にボコボコにされて、『出直してきな!』って言われてた」
……りっきーのモチベーションの高さ、そして魔王軍の教育方針が垣間見える。
気絶
そんなこんなで雑談ベースで色々と話していると……。
◆ドラ焼き「りっきー、既読ついたぞ」
とりあえず倒れた可能性が潰えてよかった。
……ということでりっきー入室。
りっきー「……あの。違うんですよ」
◆ドラ焼き「違うくないやろ」
りっきー「あの、多分なんですけど、半分くらい気絶してたんすよ」
◆ドラ焼き「おー……大変やな」
はるる「昨日まで2日くらいジャッジ業務してたもんね」
りっきー「そう、その兼ね合いで……2日くらい寝てないんですよ」
はるる「あー……それは気絶かもね」
端的に言ってヤバすぎる。
◆ドラ焼き「それでこのインタビュー終わったら調整やろうって言ったんか……すごいな」
いや、さすがに今日は寝た方がいいと思うけど……。
りっきー「大丈夫です」
二つ返事でこれとは……。
◆ドラ焼き「まあ人間、そういう時期があってもいいと思うよ……」
……そうか?
魔王軍の目標は体調管理……???
◆ドラ焼き保護者によるりっきーへの説教が始まる。
◆ドラ焼き「わかってるやんな、魔王軍の今期の目標、体調管理やって」(前節dottoが体調不良の中とんでもないミスをしたことからかと思われる)
りっきー「はい……」
◆ドラ焼き「でも調整するんやな?」
りっきー「やりたいです」
◆ドラ焼き「おう、俺は寝ずにデュエマする人間のほうが好きやぞ」
…………こえ~~~~!!!!!!
はるる「まあ冷静にリーグの会場で寝てるりっきーを見とるから、今日の寝坊もまあ納得ではあるよね」
りっきー「いや、今思えば何をしてるんだろうって感じですけどね。なぜおれはあそこでdottoさんの前で寝れたんだという……」
はるる「秋葉原で野宿してたときからこいつは何かがおかしいとは思ってたんだけどね。なぜこれで外面がこんなにいいのか……」
にわか「もう今回のインタビューで外面ペリッとめくれるからね。NARUTOの我愛羅みたいになるぞお前」
それなりに手加減して書いたつもりなのだが、我愛羅どころで済むのだろうか。正直記事公開後の反応が気が気でない。
DMGPでの優勝は、優勝って感じではない
さて、せっかく来たことだし他の2人と同様にDMGPの思い出も聞いていきたい。やはり注目は2024-1stの優勝だろうが、実はこれまでもかなりの高アベレージを残している。
りっきー「実は過去も7-2で完走までは行ってて…それこそコスプレして予選上がったときは8-0。そのとき、なんか見える世界が変わった感じがしましたね。解像度が上がったというか……」
ただ、やはり優勝したとしても納得できない部分はあるようで……。
その最たる理由は決勝戦、チームは勝利したものの個人は0-2で負けてしまったことによる。
りっきー「勝って終われたら最高だったんですけど、個人は負けちゃったからなんか勝った気がしないというか……もう1回チャレンジできるなら、決勝の場にはもう1度行きたいですよね」
りっきー「それこそ今回の2024-2ndが上手くいかなかったので。そこで初めて負けの景色を知ったって感じはしますし……DMGPには色々学ばせてもらってるな、って感じです」
それでもなお、まだ貪欲に勝利を追い求める。
狂気的なモチベーションに魔王軍という最高の調整環境。この化学反応によって、この男が決勝の舞台に戻ってくることも夢物語とは思えない。
あとがき
……いかがだっただろうか。
なんというか、個人的にはりっきーのクレイジーさと魔王軍のスパルタ方針で全てかき消されてしまった気がするのだけれど。これはこれでアリか、と思いながら筆を置きたいと思う。
3人に共通することとして、どちらかというと闘争心を内に秘めるタイプだということを感じた。
もちろん闘争心がないわけではない。特にはるるは2018年度からのシーズンを「挫折」と呼ぶほどに悔しがってきたからこその今がある。
彼らの場合それを内に秘め込み、練習やCSへの参加によってそれを発散していく。全員が穏やかな性格に見えて、負けず嫌いであり向上心の塊なのだ。
マイペース気味、しかしデュエマに対する情熱は人一倍。
各チーム末っ子組となる02世代の3人……私から言えることはただひとつ。彼らの応援、よろしくお願いします。
p.s.
今回のインタビューでは趣旨と異なる話題もちらほら出てきており、それもなかなか面白かったので2ページ目に追記する形で少しずつ拾っていく。
ランキングや現環境の話が中心となっている。みんなデュエマ好きすぎる。
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