はしがき
第2節、第1戦。りっきーvs.ZweiLance。
彼らのデッキが明かされたとき……10年以上前のことだろうか。「ボルコン杯」という交流会が各地で開催されていたのを思い出した。
根強い人気を誇る【緑抜き4cボルコン】を現代に蘇らせ、それのミラーマッチで交流しよう、という…どちらかというとカジュアル向けの大会だ。
参加者はそれぞれミラーマッチに向け、思い思いの【ボルコン】を持ち寄る……。
はずだった。
参加者の半数がレギュレーションの穴を突き、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を1枚積んだだけのビートダウン、言ってしまえば【ボルビート】を使用。
結果、1位も2位も【ボルビート】。大会レギュレーションを嘲笑うかのような結果となることがしばしばあったようだ。
これを受け、各地の「ボルコン杯」ではビートダウンを組むのが困難となるよう、レギュレーションの改訂が行われることになる。
界隈内では当然賛否両論が巻き起こったわけだが、私としては否定も肯定もできないのが正直なところだ。
【ボルコン】ミラーを楽しみたいプレイヤーが参加者の半数を占めるのはそうだし、かといってプレイヤーとしての本懐は「勝利」を追い求めること。これを否定することはできない。
とはいっても大会が運営の思い通りの形で進行されたかと言われると……やはり首を傾げざるを得ない。
【ボルビート】発生の経緯について、特殊レギュレーションに明るいメルキス氏は、シミュレーションゲーム「Civilization」開発における翻訳記事を引用。そこで語られた「水はひび割れを見つける」と同じような現象だ、と語っている。
“Civilization”開発チームで使っていた言い回しが「水はひび割れを見つける」というものだ。
つまりプレイヤーの利用できるゲームデザイン上の穴があった場合、
それが発見されて悪用されるのは絶対に不可避である。
最大の危険は、プレイヤーがひとたび利用できる穴を見つけてしまうと、
最早それを使わずにプレイする事が不可能になってしまうという事だ。
得た知識は忘れたり無視する事はできない。知らなかった方が良いと思っていてもだ。
つまるところ、勝利を追い求めた結果辿り着いた「ひび割れ」を使わない手はないだろう―――そんな話だ。
事実、特殊レギュレーションの大会が開かれる際、勝利を目指すプレイヤーはレギュレーションに沿ったデッキを組むことと同時に、「ひび割れ」の可能性を探らなければならない、というのはよくある話だ。
では、特殊レギュレーションを用いた、強豪プレイヤーを招待しての最高峰の舞台。
デュエチューブリーグにおける「ひび割れ」とは……一体どう作用するのだろうか。
後期第2節レギュレーション
レギュレーション:
「アルカディアス」「ボルメテウス」「ドギラゴン」「モルト」「ジョニー」「モモキング」「キリコ」「ボルシャック」「バロム」
以上のいずれか1つを選びその名前を含むカードをデッキに8枚以上採用しなければならない
同じチームの中で同一の名前を選択してはならない
構築ルールはオリジナル
ただし「モルト」を選択したプレイヤーのみドラグハートを8枚まで超次元ゾーンに入れることができる
事前予想記事も参照されたし。簡易的なまとめは以下に。
- 「モルト」がどう考えても強すぎる。
- デッキパワーとしては「ジョニー」「ボルシャック」「モモキング」がそれに続く形か。
- 「モモキング」「バロム」に新規カード。特に「モモキング」は強そう。
- 後期DMPランキングで好調の選手も多数。
出場選手、使用デッキ
FTG
るるる【火自然モモキング】「モモキング」
フェアリー【火自然モルト】「モルト」
あーくん【闇自然バロム】「バロム」
魔王軍
りっきー【水闇COMPLEX】「バロム」
セキボン【火光闇ファイアー・バード】「ボルシャック」
カイザ【火自然モモキング】「モモキング」
SAGA
ZweiLance【火光闇ファイアー・バード】「ボルシャック」
にわか【火光自然モルト】「モルト」
おんそく【闇自然バロム】「バロム」
所感
2チームが「ボルシャック」もどきの【ファイアー・バード】を採用。
しかも魔王軍には構築をかなり歪ませた【COMPLEX】まで。
ルールの抜け穴を突いて殿堂環境の強いデッキを持ち込む戦略をFTG以外の2チームが採用。
特に魔王軍はかなりそれを徹底しているように見えるが、まさかの最強と目された【モルト】を不採用。
つまり【モルト】よりも高評価のデッキを3つ用意してきたということ。「過去イチで準備ができている」と不敵に語ったdottoの意味するところはいかに。
SAGAも魔王軍と同様、ZweiLanceがデッキパワーの高い【ファイアー・バード】を採択。また、にわかは直近のCSで優勝を重ねたものとほぼ同じ形の【モルト】を持ち込んできた。
独特のチューニングで知られるおんそくの【バロム】は、一見オーソドックスに見える闇自然型。しかし《とこしえの超人》の採用など、細部で今節のメタゲームにしっかりと照準を合わせてきたようにも映る。
上記2チームと違ってFTGは、優等生のようなデッキ選択をしてきた印象。最強の【モルト】に加えて新弾の強化を受けた【モモキング】【バロム】が並ぶ。
強いデッキを強く使うプレイヤーが中心ということもあり、我々の事前評価で低く見積もられた【バロム】を高評価して持ち込んできたところが注目ポイントか。
クイックカバレージ
第1戦:りっきー vs. ZweiLance
りっきーのキャリアは、ZweiLanceのメンバーシップである「ZweiLanceのDM大学」内リモートデュエマ大会で強豪として名を知られるようになったところから始まる。
4年前まで何者でもなかった青年が、DTLという最高峰の舞台で成長のきっかけとなった師と相まみえる。
競技プレイヤーを志す全プレイヤーが夢に描いたシチュエーションではないだろうか。
……とはいえデッキ内容がDTLっぽくない。
先述の通りお互いのデッキは【COMPLEX】vs【バード】。オリジナルのCSかな?
試合はりっきーが《DARK MATERIAL COMPLEX》を引けておらず、ZweiLanceの初動が《ポッピ・冠・ラッキー》とお互いに苦しい進行。
しかしながら、≪ボン・キゴマイム≫《奇天烈 シャッフ》の並びを成立させたりっきーが優勢に。
そして、ここからがDTL。
無数の選択肢がある「ボルシャック」枠からZweiLanceが選び出し、4マナを支払って出てきたのは大型ブロッカーである《ボルシャック・アークゼオスNEX》。
《アリスの突撃インタビュー》をケアした動きの裏目を提示されたりっきーは、新カード≪修羅の死神フミシュナ≫。
生ける《ブレイン・タッチ》によって相手のリソースを逼迫させつつ、《奇天烈 シャッフ》4宣言で攻撃。
ZweiLanceにここで選択肢が発生。この攻撃を《ボルシャック・アークゼオスNEX》でブロックすべきか。
《ボルシャック・アークゼオスNEX》の攻撃時効果におあつらえ向きの的ができたが、りっきー視点はそれを良しとした攻撃にも見える。ここで《ボルシャック・アークゼオスNEX》がタップした状態に持ち込むことこそが真の狙いではないか……?
結果、選んだ答えはブロック。
≪修羅の死神フミシュナ≫に削られたリソースは《ルピア&ガ:ナテハ》で回復していく。
……だが、《アーテル・ゴルギーニ》が《ポッピ・冠・ラッキー》を処理しつつ、先刻墓地に送られた《奇天烈 シャッフ》を復活させる。
結果としてこれこそがゲームの終着点となった。4宣言が少なくとも2ターン続く状況下で≪ボン・キゴマイム≫に触れる気配がない。
《雷炎翔鎧バルピアレスク》を投下するZweiLanceだが、これは≪ボン・キゴマイム≫に攻撃を止められ、《ルピア&ガ:ナテハ》によってシールドが徐々に削れていく。りっきーはこの隙を見逃さない。
《アーテル・ゴルギーニ》召喚によって《雷炎翔鎧バルピアレスク》を打ち取りつつ、《奇天烈 シャッフ》4宣言から一気呵成にシールドを詰めていく。
この致死打点こそGストライクで凌いだZweiLanceだが、シールドも攻め手もない状態での≪ボン・キゴマイム≫+《奇天烈 シャッフ》4宣言がどうしようもない……まさしくお互いに弱い進行のときの【COMPLEX】vs【バード】における、お手本のような詰め方。
大舞台でりっきーが師匠越えを果たし、幸先よく1勝を手にした。
WINNER:りっきー
第2戦:セキボン vs. にわか
実はにわか、インタビューで少し触れたのだが、家族旅行で沖縄に行ってきたばかりである。
対するセキボンは北海道在住……つまるところ、日本最北から来た男と日本最南から帰ってきた男である。
なんというか……2人ともタフだなぁ。
【ファイアー・バード】を使うセキボンは《マジシャン・ルピア》、《ヤット・パウル》で手札を整えつつ、後攻4ターン目に《ハッター・ルピア》!
メクレイドからは《雷炎翔鎧バルピアレスク》。【バード】の必勝パターンまで到達したセキボンは、勢いよく1点……
にわか、師匠マイケルから託された懐刀である《サーヴァ・K・ゼオス》を最高のタイミングでトリガー!!
《雷炎翔鎧バルピアレスク》に対処しつつ、セキボンが一足遅れたためににわかのマナは6枚。
つまり、《ハッター・ルピア》を乗り越え《流星のガイアッシュ・カイザー》が着地!
そこからは一方的なゲームとなった。2枚目の《流星のガイアッシュ・カイザー》、《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》で徐々に盤面を作ったのち、《流星のガイアッシュ・カイザー》2枚の軽減が乗った1マナ《夢双龍覇 モルトDREAM》。
《ポッピ・冠・ラッキー》の効果でドラグハートこそ出ないものの、2回殴れるスピードアタッカー兼Tブレイカー。それだけでこの試合を決定づけるには十分だった。
WINNER:にわか
第3戦:カイザ vs. おんそく
なんかおんそくの顔が怖い。
と思ったら急にきゅるんとし始めた。なんだこいつ。
この2人は前期6節で優勝を賭けた戦いを行った間柄。カイザはあのときの雪辱を果たすことができるか。
まずは序盤に攻めたカイザをおんそくがトリガー《「この先は修羅の道ぞ」》+《深淵の逆転撃》でいなす。
カイザがなかなか立て直しのきっかけを掴めないまま、おんそくの《魔令嬢バロメアレディ》のプレイヤー攻撃宣言までゲームが進む。10マナから繰り出されたのは《悪魔神ドルバロム》!
当然カイザのマナは更地に。3枚のブレイクを挟むが……
《鬼退治の心絵》が盤面に残っていたことで、値千金の《王道英雄 キング・モモキングKG》トリガー!
これがおんそくのシールドを0枚まで詰める。この《王道英雄 キング・モモキングKG》はシールドから入った《深淵の逆転撃》で対処するが、おんそくも自身の自然マナを消し飛ばしてしまったせいでなかなか復帰が難しい。
おんそくが決め手を欠く中、ついにカイザが5マナを溜め…《未来王龍 モモキングJO》降臨。
《神帝英雄 ゴッド・モモキング》まで乗って《悪夢神バロム・ナイトメア》ケア。
おんそくはこれに対処する術はなく、カイザが《悪魔神ドルバロム》からの逆転劇を演じ切ってみせた。
WINNER:カイザ
第4戦:ZweiLance vs. るるる
さて、第1戦が終わった段階でるるるは環境2大トップのデッキを相手取ることが確定。
まずはZweiLance操る【バード】。「荷が重い」と語るFTGのエースは【モモキング】でどこまで立ち向かえるのか。
先攻を取ったZweiLanceが最強ムーブ。《ルピア&ガ:ナテハ》からの3t《ハッター・ルピア》!
捲れた《ハンプティ・ルピア》から初動を抜き取りつつ、《ハッター・ルピア》の脅威を押し付け続ける。
るるるはブレイク、トップの2ドローから《メンデルスゾーン》を引き入れ九死に一生を得る。ZweiLanceの先4の猛攻を受けきればまだワンチャンスが生まれる展開だ。
さて、焦点となるZweiLanceの4ターン目は…まず《アリスの突撃インタビュー》から《雷炎翔鎧バルピアレスク》。
ハイパー化した《ハッター・ルピア》から2枚目の《ハッター・ルピア》を捲り、1点……
値千金の《夢双英雄 モモキングDM》Gストライク!!《雷炎翔鎧バルピアレスク》の動きが止まり、このターンのリーサルがなくなってしまう。
さらに手札に入った《夢双英雄 モモキングDM》、《メンデルスゾーン》で6マナに到達、ということは……
《MAX-Gジョラゴン》+《夢双英雄 モモキングDM》、それに侵略できるカードが1枚。
《モンキッド <ライゾウ.Star>》とのチェインコンボをも凌ぐ、新生【モモキング】の無限チェインコンボが開始!!
とはいえ、無限ループといえどるるるにできることは実はそこまで多くはない。
デッキを掘り進めて盤面を除去するが、バトルでしか除去できない都合上、バトル中無敵の《雷炎翔鎧バルピアレスク》に対処できない。
2枚目の《MAX-Gジョラゴン》を盤面に出し……作り出したのはぴったり致死打点のみ。
《ルピア&ガ:ナテハ》によって3枚削られたシールド。スター進化によって《アリスの突撃インタビュー》はケアしている。
有効牌はおそらくGストライクのみ。るるるが一連の処理を終えてブレイク宣言に入り、ZweiLanceは祈るようにシールドを捲り上げ……
Gストライク《アリス・ルピア》!!るるるのダイレクトアタックは通らない。
とすると……必然、《雷炎翔鎧バルピアレスク》下でZweiLanceの手札には《アリス・ルピア》。
Gストライクによる逆転に次ぐ逆転。これを制したのはZweiLanceとなった。
WINNER:ZweiLance
第5戦:にわか vs. フェアリー
古巣のサブリーダー、フェアリーを相手取ることになるにわか。なんか肩身が狭そう。
そして画面がテーブル上に切り替わると……お互いに広がった8枚のドラグハート。今環境最強、【モルト】ミラーマッチだ。
ただ、大会で結果を残した自慢の基盤を素直に持ち込んだにわかに対して……フェアリーの携える【モルト】は、それをターゲットとしてロックオンしていた。
その1ターン目のチャージはvsドラゴンデッキにおける最終兵器、《「鎮魂」の頂 ベートーベン・ソレムニス》。
当然【モルト】ミラーマッチにおいてもキラーカードとなるこのカードが1ターン目から見えたことはにわかにとって強烈なプレッシャーとなる。
となると早期決着を狙いたいにわかだが、手札があまり芳しくないようだ。《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》で強気のWブレイクを通すが、このミラーマッチにおいて有効手とは考えにくい。
そして、これに対する完璧なカウンター……いや、なんにしても強烈な動きとなる、フェアリーの≪「助けて!モルト!!」≫⇒《夢双龍覇 モルトDREAM》!!
2回攻撃で《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》に対処する。エンド時には《爆炎覇龍 ガイフレア》と《熱血龍 リトルビッグホーン》が龍解しつつ、盤面には《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を装備した《夢双龍覇 モルトDREAM》。
《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》の制限をものともしない超展開で、盤面は一気にフェアリー優勢に。
にわかは2回目の《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》でごまかすが、引きに恵まれず次のターンガス欠。《メンデルスゾーン》でブーストするのみでターンを終えてしまう。
この隙を逃すフェアリーではない。手札で温めておいた《ブランド <NEXT.Star>》がついに登場。
その攻撃時効果で呼び出したのは……この状況をゴールと見据えて4枚採用された、《「鎮魂」の頂 ベートーベン・ソレムニス》。
WINNER:フェアリー
第6戦:おんそく vs. あーくん
おんそくとあーくん。この2人、かつて同じグループでともに調整をした仲である。
お互いにこだわりが強い性格というのもあり、しばしば諍いも起こすこともあったようだ。
ただ、あまりにもデュエマが大好きという根っこの部分は共通しているので、なんやかんやで話が合う……というのもよく聞く話。本日のデッキも、正統派【闇自然バロム】ミラーマッチだ。
まずはお互いにマナを伸ばしあうが、《魔令嬢バロメアレディ》の的を作りたくないことから安易にクリーチャーを出すことができない。
緊迫した戦況の中、まずあーくんが《修羅の死神フミシュナ》でおんそくの手札を詰めていく。
このハンデスで《魔令嬢バロメアレディ》を抜かれたおんそくは次のターンも動けず。
追い打ちをかけるようにあーくんは2枚目の《修羅の死神フミシュナ》、さらにはテックカード≪ラビットハンド≫でオールハンデスに成功。すべてドロー付きのハンデスなのでリソースも潤沢だ。
おんそくはトップ《魔令嬢バロメアレディ》からの《悪夢神バロム・ナイトメア》で若干の延命を図ったものの、ハンデスによって失ったリソースを取り戻しきれない。
あーくんのタップイン《魔令嬢バロメアレディ》+《修羅の死神フミシュナ》の布陣にうまく対処できず、《悪魔神ドルバロム》着地によるランデスまで許してしまう。
しかし、おんそくがトップで4枚目の《魔令嬢バロメアレディ》を引き込み、攻撃時《悪魔神バロム・クエイク》。まだまだゲームができるぞ、と言わんばかりの圧をかけるが……
ここにはあーくん《深淵の逆転撃》。追い打ちの《悪魔龍 ダークマスターズ》まで叩き込み、おんそくのリソースを徹底して奪い取りに行く。
最終的にリソースを刈り取った状態で《悪魔神バロム・クエイク》を絡めてシールドを詰めに行く。
ここはGストライクと《深淵の逆転撃》で止められるも、結局ハンデスによって失ったリソースを取り戻すことが叶わず、《魔令嬢バロメアレディ》を使い切ってしまったおんそくは万事休す。
最後は《悪夢神バロム・ナイトメア》からTブレイクで返し手なし。詰将棋のような進行で因縁の対決をあーくんが制した。
WINNER:あーくん
第7戦:るるる vs. りっきー
先刻のゲームでミスがあったようで落ち込んでいたるるるだが、チームメイトが2本取り返したことによりメンタルリセット。
だが、【バード】に続いて、りっきーのジェネリック【COMPLEX】が立ちはだかる。ミスターデュエチューブリーグの受難は続く。
先ほどは弱い進行の中で戦ったりっきーだが、今回は先1《DARK MATERIAL COMPLEX》というロケットスタート。
さらに≪ボン・キゴマイム≫まで投下し、攻めるゲーム進行にしたいるるるの行動を強烈に制限する。
対処すべく《MAX-Gジョラゴン》を出すが、これは《冥土人形ヴァミリア・バレル》によって手札に戻されたうえ、《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントに利用されてしまう。
ならば、リソースを伸ばして1ターンで≪ボン・キゴマイム≫を処理しながら走り出すことを狙う……が、りっきーはそれすら《絶望と反魂と滅殺の決断》の2ハンデスで許さない。
結局るるるは有効牌を引けないまま、りっきーの《DARK MATERIAL COMPLEX》起動。
≪同期の妖精≫まで添えられての横綱相撲により圧殺。りっきー、圧巻の2-0。
WINNER:りっきー
第8戦:フェアリー vs. セキボン
りっきーの2-0に嬉しそうな様子を見せるセキボン。対するフェアリーはエースデッキである【モルト】を使っている以上負けるわけにはいかない。
今環境最強【モルト】vsオリジナル環境最強【バード】の結末やいかに。
後攻セキボンの《ルピア&ガ:ナテハ》、先攻フェアリーの《ボルシャック・栄光・ルピア》からゲームが始まる。
後攻3ターン目を迎えるセキボンは……《ポッピ・冠・ラッキー》。《ハッター・ルピア》に辿り着けず、無念のターンエンド。
「これターン帰ってくんのかな~…」とぼやくセキボン。
そしてその言葉通り、vs.にわかで起きた出来事の焼き回しを見せられることになる。
≪「助けて!モルト!!」≫⇒《夢双龍覇 モルトDREAM》!!
《ポッピ・冠・ラッキー》の効果でドラグハートこそつかないものの、《ルピア&ガ:ナテハ》の効果でシールドは3枚まで落ち込んでいる。
つまり、横の《ボルシャック・栄光・ルピア》と合わせてリーサル+1。
《アリスの突撃インタビュー》も効かない14コストによって瞬殺。フェアリーが圧巻の2-0を達成した。
WINNER:フェアリー
第9戦:あーくん vs. カイザ
あーくんとは、どこまでも真っすぐな男である。
この対戦中、カイザがジャッジにルール質問をする際、その話から過度な情報を聞き取らないようにと、目を逸らしていた。
その目線は、カメラに向かって、真っすぐ。
……どこまでも真っすぐな男である。
試合は先攻のカイザが初動を欠損する中、あーくんの4t≪修羅の死神フミシュナ≫からスタート。
ただ、このマッチアップは【モモキング】側のイニシアチブが大きい。「まだ死にたくない……」と呟くあーくんだが……。
カイザは《夢双英雄 モモキングDM》から《武闘英雄 カツ・モモキング》、そしてゲームを決定づける《アルカディアス・モモキング》!!
さらにここでTブレイク。この攻撃、《深淵の逆転撃》もGストライクも、返しのターンの《魔令嬢バロメアレディ》ですら意味をなさない……超ローリスク、いわゆる”無料”の3点である。
【バロム】に入りうる、かつこれに対する有効な返し手は《流星のガイアッシュ・カイザー》くらいのものだが、あーくんのデッキにそれは入っておらず…返すターンに≪修羅の死神フミシュナ≫を出すのみ。虎の子のハンデスも有効牌を引き抜くには至らず。
最終的に《未来王龍 モモキングJO》から”アルモモキャンベロ”のロックまでかけてダイレクト。有利状況を見逃さない見事なプレイに、あーくんもお手上げ。
前期は不振だったカイザが好プレイングを魅せここで躍動。【バロム】の2人から星2つを持ち帰った。
WINNER:カイザ
所感
後期第2節を終えての順位は以下の通り。
魔王軍が4-2と勝ち越し。前節同じ順位だったFTGから1歩リードを奪う。
SAGAは前期後半からの不調が止まらず、スタートダッシュで大きく失速してしまった。
今節に向けて相当な準備をしてきたという魔王軍リーダーのdottoは、勝因をこう語る。
今回の勝因は
①他チームの結論になり得るラインに日曜日の時点で辿り着いていた
②対「モルト」に勝てるデッキを3個(日曜日時点)+1個作成できた
③最もパワーのある「モルト」に対して新商品の「バロム」「モモキング」が有利を取れると認識できた上で他チームも使わない理由がない「バロム」「モモキング」を仮想敵に追加設定できた
④不利対面が多くなると想定される「モルト」を編成から除外した
⑤りっきー君がdottoの注文を全て満たしたデッキを完成させたことかな!
―――dottoのXより引用
まず①がとんでもない。全カードが判明したのが前週の金曜日であることを考えると、あまりにも調整の速度が速すぎる。
そして前回のインタビューの様子を見るに、撮影日までに数多の案を試しては没に……という気の遠くなるような作業を繰り返したりっきーが、ついにdottoをも納得させるデッキに辿り着いたこと。
セキボンこそ振るわなかったものの、りっきーとカイザがしっかりと2-0。彼らの無尽蔵のモチベーションこそが今回の勝ち越しに繋がったのだろう。
他チームが魔王軍に出し抜かれる中、フェアリー操る【モルト】が1人2-0と気を吐いた。
vs.【モルト】を強烈に意識した構築でにわかに差をつけた勝利は、まさに”構築のマエストロ”ならでは。
SAGAは大きな出遅れとなったが、第3節は勝てば3ptを獲得できるサブリーダー戦……それも新弾プールを用いたシールド戦がある。
SAGAのサブリーダーは、シールド戦やドラフトといったリミテッドレギュレーションを大得意とするおんそく。ここで大きく巻き返しを図りたいところだ。
あとがき
かくして、第2節のレギュレーションを巡る彼らの物語は幕を閉じた。
……【バード】と【COMPLEX】という「ひび割れ」を残して。
これは我々視聴者が期待していたものだったのだろうか。
特殊レギュレーションの中で、言ってしまえば「ずる賢く」戦うことがDTL選手に求められていたものだったのだろうか。
これに結論を出すためには、まずDTLにおいて選手が目指しているものが何かを定義しなければならない。
インフルエンサーとしてキャラクターを売り出すこと?新商品のプロモーション?
いや、それらのショーマンシップは二の次に過ぎない。
彼らが欲しているものは「勝利」、そしてチームのDTL優勝。それだけである。
であれば、まずそれなりにプール内に存在する「ボルシャック」を冠したファイアー・バードを入れれば構築が成立するという点で、【バード】に2チームが飛びついたのは必然と言えるかもしれない。
特にZweiLanceにとってはそうだろう。彼が常日頃から提唱している「フルパワー理論」に基づけば、オリジナル環境でさえトップクラスのデッキである【バード】をこの場に持ち込まない理由がないのだ。
だが、【バード】を使用した2人は合算して1-3。その1勝も薄氷の勝利ということで、その目論見が大きく外れてしまったことは否めない。
「ひび割れ」に辿り着くことは、イコール勝利に結びつくわけではないのだ。
そう、求めるのはあくまで勝利である。その点でFTGは「ひび割れ」に頼ることなく、いわゆる「優等生」的な回答を出してきた。
環境最強の【モルト】に勝てるデッキを3つ持ってきた……その上で、フェアリーは自分もミラーマッチを意識した【モルト】を使うことでデッキパワーを担保してきたのだ。
まさに定義した環境の半周先を行く、強豪プレイヤーにとってお手本のようなチーム編成だっただろう。
FTGは「モルト」「モモキング」「バロム」に必ず辿り着いてくれると信じてたからこの読みが当たった時は内心めっちゃ喜んでました
―――dottoのXより引用
それすらも魔王の掌の上だった。
上述の④まで辿り着いた魔王軍はさらにメタゲームを回すことを良しとし、その上で強度の高いデッキを組むことをチームメンバーに要求。身体に異常をきたすほどの狂気的なモチベーションを原動力に、広大なカードプールの海の中を潜り続けた。
辿り着いたのは今節のメタにガッチリとハマる≪ボン・キゴマイム≫、それを無理なく搭載できるハンデス型【COMPLEX】の基盤、さらに闇マナを確保しつつ、最低限の強さが保証される「バロム」枠。
まさに自分から「ひび割れ」を作りに行くがごとく、メタゲームを完璧に読み切ったりっきーの構築は、ZweiLance、るるるという強豪2人に全く逆転の芽を与えない完勝を収めてみせた。
今回引き合いに出した、かつての「ボルコン杯」とDTL。どちらも特殊レギュレーションを用いた勝負である。
ひとつ大きな差を挙げるとするならば……デュエチューブリーグの公式HPから言葉を借りると、これが交流会ではなく、強豪プレイヤーの真剣勝負であるという点だ。
真剣勝負。ややチープにも聞こえるが、残酷な言葉である。
勝者がいれば敗者も生まれる。
どこまで準備を突き詰めてもカードゲーム特有の結果論に悩まされる。
勝負が終われば反省もそこそこに、また次の勝負へと駆り出される。
だからこそ、その上で今回2チームを完璧に出し抜く選択を見せた魔王軍を高く評価したい。
勝利を真摯に追い求める準備をし、勝つべくして勝つ。その過程で誰も見つけていない「ひび割れ」があったとしたら、迷いなく飛び込む。
私見が混じってしまうことを前置いた上で言うと……今節の【COMPLEX】を持ち込んでの2-0は、競技カードゲームにおいて最上級にカッコいい勝利なのだ。
そして、彼らはまた次の勝負へと身を投じる。
いつもの「DTLルール」に加えて3ptを賭けたサブリーダー戦は、これまでより濃密に新弾に対する準備をしなければならない「シールド戦」。
チーム単位で行う構築に加え、YouTube活動の中で日本屈指の構築力を磨いてきたフェアリー、独自の構築理論に基づいて他を出し抜けるポテンシャルを持つおんそく、そしてDMマシーンとして知られる練習の虫である◆ドラ焼き。
彼らが勝利に向けてどのような選択を下すのか……。それを楽しみにしながら筆を置きたいと思う。
参考文献:メルキス研『水はひび割れを見つける』~vaultボルコン杯の考察
画像出典:YouTube動画生配信 デュエチューブリーグ後期第2節生配信 より
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