2024年後期DMPランキングも残すところ1ヶ月ほどとなったわけだが……全国大会のボーダー争いが苛烈すぎる。
12月後半は1週間でボーダーラインが1200pt上がったという……もはやランカーには週1度のCS優勝が求められているのではないか。
そんな中における4.8倍以上のポイントが配られる大型CSというのは、特に上位ランカーにとっては優勝するだけで全国大会出場に大きく近づく……事実上エリア予選と立ち位置が変わらないのだ。
最近はそのような大会も数を減らしてきたが……12/28、マイドームおおさかにて開催された、第2回けみくろCSは久方ぶりの4.8倍CS。全国各地から猛者が集まることとなった。
Vのもれが早々と敗退する中、dottoがサラッと予選を全勝で折り返す……ある意味けみくろCSらしい光景も垣間見え、サブイベントも盛り上がる中……。
テーブルに残ったのはジャッジと3位決定戦、決勝戦を戦う4人のプレイヤーのみ。
けみくろCSという舞台ですら収まり切らない…2024年度後期DMPランキングにおける、ターニングポイントになるであろう戦いが始まろうとしていた。
「ヤバい、今までのデュエマ人生で1番緊張している……」
そう話しながら決勝戦のテーブルに座ったもっちー。最近の若いプレイヤーらしく、ランキング上での名義では後ろに絵文字をつけているが本稿では省略。
9030pt、26位というまだまだ全国大会を狙えるラインにつけている彼は、主戦場とするオリジナルフォーマットの高倍率大会に出るべく、遠路はるばる愛知県から参戦。
決勝に進んだ段階で2400pt、全国ボーダーに手が届くことが確定してもなお、その緊張の糸が緩むことはなかった。
そして、それは何の因果か……相対するつんまも同じような状況なのである。
地元、大阪府を拠点に精力的にCSに参加している彼は現在7734pt、34位……もっちーとCS優勝1回分だけポイントは離れているが、すでに確定している2400pt分だけでボーダーラインとなる10000pt付近に手が届くのは全く同じなのだ。
ベスト8に到達した時点でその緊張はギャラリーにも伝わっていたようだ。友人曰く、いつもに比べ明らかに表情が硬いという。
そして、もう1勝をもぎ取れば4800ptが入り……団子のように固まっているボーダーラインから、一歩抜け出すことができる。
半年かけて行われるランキングレースにおいて、これほどまでに重要な意味合いを持つ試合が他にあるだろうか。
DMPランキングという過酷なフルマラソンを走り切るために……2024年最後の大勝負が幕を開ける。
先攻:つんま
つんまの初動は水マナ2枚チャージからの《異端流し オニカマス》。
これを見て熟考しつつ、《マジシャン・ルピア》にて初動を行ったもっちーは……この時点で「概ね勝ったと思った」と語る。
つんまが得意とする【水闇COMPLEX】の《DARK MATERIAL COMPLEX》欠損。現代デュエマを少しでも齧ったことがあるプレイヤーなら、ここまでの進行がいかにつんまにとって致命的かというのは想像に難くないだろう。
そして環境最強、【ファイアー・バード】を操るもっちーが勝ちを確信した理由はもうひとつ……。
未だ《終止の時計 ザ・ミュート》という弱い動きしかできないつんまを置き去りにする、後攻3ターン目《ハッター・ルピア》!!
このメクレイド先は《マジシャン・ルピア》とやや弱め……とはいえ「後手3ハッター」の押し付けが強力であることは誰の目から見ても明白だ。
が、もっちーが「不利対面なんですよね……」と試合前にこぼしたように、《DARK MATERIAL COMPLEX》を欠損しようが最速《ハッター・ルピア》をされようが、このデッキには最強の返し手がある。それはもちろん、《飛翔龍 5000VT》!!
これは《ハッター・ルピア》の効果で破壊されるものの、地上戦における最強の核爆弾によってもっちーの4ターン目はチャージエンド。
事実上のエクストラターンを得たつんまは、満を持して《アーテル・ゴルギーニ》を投下する。
「マジか……」
声の主は……このプレイが誤算となったつんま。墓地肥やし+蘇生を選択した《アーテル・ゴルギーニ》の墓地肥やし内容がとんでもなく弱すぎる。
しかもその内容は《アーテル・ゴルギーニ》、《忍蛇の聖沌 c0br4》……そして、このマッチアップにおいて何枚でも喉から手が出るほど欲しい、《飛翔龍 5000VT》2枚。
仕方なく3ターン目の《終止の時計 ザ・ミュート》で捨てた《異端流し オニカマス》を蘇生。《異端流し オニカマス》による睨みが常に効いているとはいえ、《飛翔龍 5000VT》がデッキ内にもう1枚しかない。ここでつんまは熟考。
もう稼げる時間が長くはない……勝負を急ぐべきかもしれない……どの程度ゲームスピードを早める……?
ジャッジから催促が入るほどに考え込んだつんまの出した結論は、《終止の時計 ザ・ミュート》で1枚のみシールドをブレイク。ここでトリガーはない。
ターンが渡ったもっちー。自分の盤面が0、手札からのプレイに関しては概ね決まっている。《マジシャン・ルピア》+《ハッター・ルピア》、ハイパー化して《終止の時計 ザ・ミュート》に向けて攻撃。
そして、メクレイドで捲った3枚を見て深く考える。このターンの行動を深く考えなければならないのはもっちーも同じなのだ。
相手の墓地に《飛翔龍 5000VT》が3枚……とはいえ《アーテル・ゴルギーニ》、《異端流し オニカマス》が重い……ここから勝利に向かうには……?
果たして、メクレイドの選択肢は決して強力なものではなかった。選ばれたのは《異端流し オニカマス》下での《アリスの突撃インタビュー》。
とはいえここまで【バード】でランキングを走り続けたもっちーだ、考えなしに選ばれた選択肢ではない。《コッコ・武・ルピア》を捨てて《終止の時計 ザ・ミュート》を破壊しつつそのまま蘇生、その効果でつんまの墓地を利用して《アーテル・ゴルギーニ》を破壊……これは2体目の《異端流し オニカマス》に破壊置換が充てられ、一連の流れで《異端流し オニカマス》含む2体のクリーチャーに対処。
つんまは《異端流し オニカマス》効果で《コッコ・武・ルピア》を戻さず、そのまま。
息の詰まるような攻防。2人の表情も硬いまま、つんまの先攻6ターン目が渡った。
そして、もっちーの顔が大きく歪んだ。
それは、つんまが《冥土人形ヴァミリア・バレル》で《ハッター・ルピア》を除去した、残りの3マナを捻ったときのことだった。
その手から放たれたのは、ずっと手札に抱え続け、ゲームの急所を見極めて放たれた、もっちーが絶対にケアできない一撃。
先刻までのやり取りで3枚すでに見えていたはずの……《飛翔龍 5000VT》4枚目!!
先のターン1枚のブレイクを挟んだことも、《異端流し オニカマス》が《コッコ・武・ルピア》を戻さなかったことも、全てはこの状況を作り出すため。
《冥土人形ヴァミリア・バレル》のハイパー化、《アーテル・ゴルギーニ》でさらに2枚のシールドを詰め……ターンエンド。まさにチェックメイトだ。
もっちーにとって、できることは《凰翔竜機マーチ・ルピア》での殴り返しのみ、これは《冥土人形ヴァミリア・バレル》でブロックされて相討ち。どんな歴戦の【バード】使いでさえ、《飛翔龍 5000VT》下で満足に動けるわけもない。
ターンが返ってきたつんま。2枚まで削られたシールドを割り切るには十分な打点、そして2ターン目からずっと睨みを効かせ続けていた、全てのGストライクを無視できる《異端流し オニカマス》……。
【水闇COMPLEX】を愛用し続け、今環境におけるキーカード《学校男 / ゾンビ・カーニバル》に辿り着き、決勝の舞台で《DARK MATERIAL COMPLEX》なしで細い線を渡り切った。
352名の頂点に立ち4800ptを手にしたのは、地元大阪在住のランカー、つんまとなった。
WINNER:つんま
言ってしまえば、たかが1つのデュエマの試合だ。
《ハッター・ルピア》がもっちーに微笑まなかった。つんまがゲームの急所を見極めて2枚の《飛翔龍 5000VT》を突き刺した。この二言だけでこの試合を語り終えることもできる。
だけれど、彼らがこれまで積み上げてきた、9030と7734の数字こそが、けみくろCSという大舞台にすら収まり切らないほどに、とんでもなく重い意味合いを持たせてしまった。
果たして2人のポイントは全国大会出場圏内へ到達し、ボーダー争いはさらに苛烈化。
つんまと同じく関西で活動するkaisoraは、この言葉を以て2人を祝福した。
「全国で待ってる!」
ボーダーラインとなる10000pt付近には全国各地の強豪が集う。まだ戦いは終わらない。
全国大会での再会を目指して……2024年度後期DMPランキング、最後の1ヶ月が始まる。
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