異次元の超獣使いとデュエチューブリーグ~伝道者と求道者~

DTL

伝道者に導かれて

 マナをチャージして、クリーチャーを召喚して、5枚のシールドをブレイクするカードゲーム。
 ルールはこれくらいしかわからないけど、コロコロコミックに載っていたり、朝にテレビをつけたらアニメが流れていたり、それを見た友達が周りに広めたり……。

 デュエル・マスターズの名前くらいは知っている。特に今の20~30代にこういった方は多いのではないだろうか。
 そして、なんとなくこうも思っているのではないだろうか。
 デュエマはたかが子供向けカードゲーム。大人になった今、そんなに本気でやるものじゃない……と。
 客観的意見として、これは事実である。このゲームを始めて10年以上経つが、今でも頭の片隅でどうしてもそう思ってしまう自分を否定できないでいる。

 でも、私は真実を知ってしまったのだ。
 たかが子供向けカードゲームに、月日が経っても褪せない輝きがあることを。
 たかが子供向けカードゲームに、人生を賭してきたプレイヤーたちがいることを。

伝道者、加賀美ハヤト

 まずはその伝道者として、「異次元の超獣使い」となったにじさんじ所属ライバー……とりわけ、加賀美ハヤトについて。
 かねてからデュエマプレイヤーであることを公言していた彼はアプリ版「デュエプレ」リリースに伴ってその布教活動に取り組んできた。
 その活動は同僚の社築花畑チャイカをも巻き込み―――ついにはバーチャルの垣根を越えて本家本元でのコラボレーションにまでこぎ着けてしまった。

 私も彼のいちファンではあるのだが、どちらかというとプロ顔負けの(というより完全にプロの)歌唱力やライブパフォーマンスという、あまりデュエマに関係ない部分に惹かれたところが大きい。トークスキルも含めて、その技術を身につけるには途方もない苦労があったことは想像に難くない。
 それらを用いてにじさんじトップクラスのライバーに登り詰めた彼にとって、一挙手一投足でちょっとした流行り廃りを作り出すのは造作でもない。

 彼が選んだもののひとつが、子供向けカードゲームであるデュエマだった。
 それだけのポテンシャルがこのゲームにあると信じて、布教活動に取り組んできた。

 そうして発売される「異次元の超獣使い」。
 このパックを機に久しぶりに始めてみよう。伝道者たちの熱に当てられ、そう思ったあなたたちにぜひ彼らの存在を知ってほしい。

 このゲームに人生を捧げてきた、求道者たちの存在を。

デュエチューブリーグ

 デュエル・マスターズ公式YouTubeチャンネル「デュエチューブ」。
 そこで昨年4月から繰り広げられてきた壮大な戦いがある。
 その名も「デュエチューブリーグ」(以下DTL)。

 これは、ただのリーグ戦ではない。
 全国大会、そして2000人規模の大舞台を勝ち抜いてきたトッププレイヤーたち―――その中でもさらに選りすぐられた15人が、3つのチームに分かれてぶつかり合う。

 1ヶ月に1度の試合。
 だが、彼らはただ戦うのではなく、節ごとに設定された特別なルールのもとでデッキを組まなければならない。
 定石が通じない。経験がものを言わない。
 それでも彼らは、勝利を求め、新たな戦略を生み出し、ひとつのデュエルにすべてを懸ける。

 このあとYouTube上で公開される後期第6節は、半年間のリーグ戦における最終節でもある。
 見どころは最後に行なわれるリーダー戦…そこでは1勝あたり普段の3倍のポイントを賭けて各チームのリーダー同士がぶつかり合う。

 「異次元の超獣使い」がきっかけで見始めた人たちにも、この熱量は伝わるはずだ。
 それはまさに将棋や麻雀のプロリーグのよう……日々の研究成果を一発勝負の場でぶつけ合う、マインドスポーツのひとつとして数えていい。

 難解なルールだからこそ、燃える者たちがいる。
 目の前の一戦に、文字通り「命を燃やす」選手たちが―――。

“カリスマ”ZweiLanceと、Team SAGA

デュエマとは、1人の男を狂わせるほどの「呪い」。

 その名が知れ渡ったのはYouTubeチャンネル「フェアリープロジェクト」の相方として。
 プレイングだけではなく、その言葉、その思想、その生き様——。
 彼の在り方に共鳴するフォロワーが増え、やがて人気は爆発的に広がり、気づけば、デュエル・マスターズという枠を超えていた。
 ZweiLanceの名前は、デュエマに限らず、カードゲーム全体を代表する存在として語られるようになった。

 曰くDTLの形式には苦手意識を持っている様子。自身の1つのデッキを極め上げるスタイルと真逆のことを求められる日々に悪戦苦闘中。
 そんな中で頼りになるのがチームメンバー。特にデッキビルド能力に長けるおんそくマイケルはまさしくSAGAの屋台骨。
 特に負けが込んで精神的に滅入ってしまったメンバーに対して喝を入れたおんそくはチームの精神的支柱とも言えるだろう。

 現在3位、優勝こそ非常に厳しいものの、それでもその在り方はきっとファンの心に残るものがあるはずだ。

“魔王”dottoと、魔王軍

一言では言い表せない。人生をともに過ごしたデュエマに対する感情を、言葉を選ぶようにゆっくりと紡ぐ。

 デュエル・マスターズには、文字通り「最強」の男が存在する。
 誰も思いつかないような発想を、理論に基づいて緻密に組み上げるデッキ構築。
 対峙する者の手の内をすべて見透かしているかのようなプレイスキル。

 その圧倒的な実力ゆえに、本人の穏やかな雰囲気とは不釣り合いな”魔王”の異名を持つ。
 2017年全国大会王者——dotto

 その強さに惹かれ、多くのプレイヤーが彼のもとに集った。
 「DMロボット」の異名を持つほどに練習の虫である◆ドラ焼き
 そして、コロナ禍以降にゲームを始めながらも急成長を遂げたりっきー

 dottoを中心に結束された魔王軍の個々の目標は「全国大会優勝」。
 DTLで負けていてはそこまで到底辿り着けるはずもない。最終節、首位FTGとの決戦に向け、魔王軍は静かに刃を研ぐ。

“社長”flat-と、flat-gaming

もはや一流インフルエンサーの仲間入り。しかし、デュエマに対する還元こそが彼にとっての「手段」。

 flat-は他のリーダーとは一線を画す異色の経歴を持つ。
 競技シーンでの華々しい実績こそ少ないが、その影響力は計り知れない。

 YouTubeチャンネル「flat-工房」の爆発的な人気。実店舗flat-工房の経営。
 さらに、ゲーミングチームflat-gaming(以下FTG)の設立。
 彼の活躍の場は、もはやデュエル・マスターズという枠組みに収まらず、インフルエンサー界隈でもその名を轟かせている。

 デュエチューブリーグにあたってはFTGの監督ポジションとして、関東の猛者を集め上げた。
 通称「構築のマエストロ」、デッキ構築を得意とするサブリーダーフェアリー
 そして、デュエチューブリーグ開幕からすべての試合に出場し続ける”ミスターデュエチューブリーグ”こと、エースるるる

 そうして監督としてチームを指揮する——はずだった。
 しかし、第6節のリーダー戦において、リーダーであるflat-の出場がマストとなってしまうのだ。

 競技歴は他のリーダー2人と比べれば浅い。だが、彼には実力者揃いのチームメンバーがいる。
 その支えを受け、最適なデッキを選び出すことだろう。
 さらに言うと、flat-は競技シーンでも決して無名のプレイヤーではないのだ。ZweiLancedottoの寝首を掻くポテンシャルは十分にある。
 そして今、”監督”ではなく”プレイヤー”として、下剋上を果たすことはできるか——。

あとがき

 デュエル・マスターズというゲームの歴史が長くなればなるほど、それに携わる人々の物語もまた、濃密になっていく。
 最終節を前にして、改めて彼らの歩みを振り返ると、このゲームに情熱を注いできた者たちの存在がより鮮明に浮かび上がってくる。

 加賀美ハヤトたちが先導する形で、新たなプレイヤーがこのゲームに触れ、デュエチューブリーグを知る。
 そこには、競技シーンの頂点を経験した者たちが、己のすべてを賭けて戦う姿がある。
 決して「子供向け」の一言では片付けられない、研ぎ澄まされた思考と鍛え抜かれたプレイング。
 「異次元の超獣使い」というパックの名の通り、このゲームは異次元の領域へと進化し続けている。

 そして、半年間にわたるデュエチューブリーグの戦いも、いよいよ終幕を迎えようとしている。
 リーダー戦という大一番を控え、プレイヤーたちは最後の準備を進める。
 このゲームに人生を懸けてきた者たちにとって、それは単なる勝敗以上の意味を持つ―――この舞台に立てることそのものが、彼らの生き様の証明なのだ。

 誰が勝者となるのか。それは、まもなく決まる。
 今、最終節の幕が上がる。

記事内スクリーンショットデュエチューブchの決闘者たちの記録より
この記事を書いた人

DM Lithograph発起人。公式カバレージライター。DMGP9th優勝。第2期認定ジャッジ。最近はデュエプレめっちゃやってる。カス。

「私がめっちゃイヌ科さん好きみたいな印象を持つかもしれませんが、別にそんなことはないんですよ。どちらかというと三振かホームランかみたいなタイプだし、〆切破りの常習犯だったし、色々とむず痒く思うこともあるんですが……。」(神結先生の記事より抜粋)

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